株式公開するということは、不特定多数の株主が会社の所有者になり企業に対する注目も高まりますので、今まで内輪で処理してきたことでも、法に則って正確に処理しなければならないことが出できます。
以下のようなことが未公開の企業は守られていないケースが多々あります。
株主総会・取締役会を開催していない。
株主総会・取締役会議事録を作成していない。
株主総会・取締役会での決議事項を社長の意思決定のみで決めてしまっている。
営業報告書を作成していない。
社会保険に加入していない。
例えば未公開企業では、外部から法的な指摘を受けるのは税務署、更にあっても社会保険事務所ぐらいのもので"商法"などは役員変更時くらいでほとんど意識していません。しかし株式公開に際しては、この"商法"について注意しなければなりません。商法違反をしてしまっては、公開延期・中止につながる場合があるからです。
私がやってしまった失敗例
株式公開をいつかは行いたいというレベルの会社に伺っていた時で、その会社は以前増資を行い株主は30〜40ほどになっていました。
ある時社長さんと話しているとこのような話がありました。『この前の増資の時、事業提携をする予定だった○○社に株主になってもらったんだけど、いろいろあって提携を止め株を返すというので株式を△△さんに買い取ってもらうことにしたんだ』と言われました。そこで私は、取締役会議事録の作成の必要性と買取価格の確認で済ませてしまいました。
ところが、しばらくたって会社の会計データをみていたら有価証券勘定に自社株が・・・・。
私 『この有価証券勘定にある自社株ってなんですか?』
会計担当者 『○○社が返してきたので』
私 『この前社長に伺いましたけど、△△さんに買い取ってもらったのでは?』
会計担当者 『なんかうまくいかなくなって止めたみたいです。』
私 『お金は?』
会計担当者 『みずほの通帳から払いました。(もちろん会社の)』
私 『うっそ! それじゃ自社株買じゃないですか!』
会計担当者 『そうですね』
私 『・・・・・・・・・・・・。』
自社株買は株主総会決議になり、株式譲渡の取締役会の承認事項とは雲泥の差です。取締役会は身内だけなので、取締役会で承認を得たことにして後から議事録を作成すればなんとかなります。しかし株主総会の場合この会社は既に30〜40の株主が存在し外部株主も多数いる状況であり、更に自社株買いは前回の株主総会において承認されていなければならないのですが、もちろんもう既に終わってしまっているからです。
『サー この状況どうしようか』と悩んでいるうちに、急転直下社長から『今年以降、業績がよくなるので今決算で公開したいと考えてるんだ。そこで監査法人を頼もうと思っているんだけど・・・・。(かなり真剣に)』
『ヒエー!!公開はまだ遠そうなので、その時になってから書類等を作り直せばいいか』と内心思っていたんだけど・・・。。
更にしばらくして『来月監査法人が予備調査っての来るから、よろしく!』
もう、仕方ない言おう『社長 何度か話している 自社株買の件ですが・・・・。』
慌てて株主総会召集通知・取締役会議事録・株主総会議事録等の作り直しを行いましたが、問題は委任状(議案事項を承認しますと言う意味の書類)の押印です。管理部長から全ての株主に事情を説明してもらいなんとか再度押印を頂き事なきを得ました。
この時は"自社株買の商法違反"などしたら後々どうなるかとても不安でした。(後追いなので、違反した事には間違いないですが・・・。)
上記の例のように商法などは未公開の企業にとっては、今まであまり意識しないで来ている法律ですが、実際にはいろいろな決まりがあり、今回のような多少の違い(譲渡なのか自社株買なのか)で大きく変わってしまうことがあります。未公開企業のうちは、ほとんどが身内だけであり"ウヤムヤ"のうちに済まされた事項も、公開ともなればそうも行きません。事によっては訴訟(株主代表訴訟等)になってしまう可能性もありますので、あやしき事柄は専門家への相談を行い、できれば自社内部においても公開までに広く浅く勉強(商法・証券取引法等)をしておくと良いと思います。(全く知らないと相談の必要性も判断できませんので)
|